【レポート】視覚障害者演劇カンパニー「Extant」ワークショップ

2018年10月中旬に、イギリスの演劇カンパニー・Extant(エクスタント)のワークショップを開催いたしました。

Extantは視覚障害の方との創作活動における環境づくりと、新しい演出表現に関する研究をおこなっています。
【Extantのウェブサイトはこちら(英語のみ)】

今回は、芸術監督であり、ご自身も視覚障害者であるマリア・オショディさんを招聘し、
視覚に障害のある人と安全で制約のない形で表現できる創作環境をつくる方法や、

視覚を超えたところにある表現や演出の可能性を研究するレクチャー&ワークショップをしていただきました。

当日の様子をお伝えします。

Extantは20 年以上の歴史を持つ演劇カンパニーで、
創作・鑑賞の両面で視覚障害者を巻き込むことをミッションとし、
視覚障害者が舞台芸術に親しむめの環境整備や作品作りについて
先駆的な取り組みを行い、国内外で高く評価されています。

受講生は、SLOW MOVEMENTで活躍してくださっているアーティストの方が中心。
一体どんなふうに作品を作っているのか、ワクワクしながら、前半のレクチャー開始。

視覚に障害のある方が一緒に舞台を楽しむためのサポートとして、
従来はヘッドセットをつけて音声ガイドを聞いてもらうという方法がありますが、
それでは鑑賞体験として視覚に障害のある方が孤立してしまう、という課題があります。
そこでExtantでは、作品の中に音声ガイド的な演出を組み込むことで、
障害の有無に関係なく同じ条件で舞台を楽しめる工夫をしているそうです。

レクチャーでは、Extantの作品の映像をいくつも見せてもらいながら、
具体的に教えていただきました。

例えば、「Sheer」という作品では、真っ暗闇の中で演劇が行われるというパートがあります。
その中では触覚的な体験を取り入れたり、登場人物が自身の動作を台詞として(自然に)説明するという工夫が盛り込まれています。

ほかにも、考えたこともなかったようなユニークで遊び心のある演出がたくさん。
実際に体験してみたいと、後半のワークショップへの期待も高まります。

ワークショップでは、視覚に障害のある方との活動や、
音声による説明をするためのエクササイズの要素が盛り込まれたワークを行いました。
身体を動かすワークですが、頭もフル回転です。

 



普段、見える人はそれを当たり前のこととして創作活動を行いますが、
後半のワークショップでは、その常識を解体するようなジェスチャーや言葉を用いたゲームなどを行いました。
見えない(視覚が使えない)状態で音や言葉などの情報から想像する側と、
見えない状態の人にどう伝えていけばよいか考える側の両面を体験できるような内容で、
Extantの創作の一端を味わうことができました。

見えない状態にあるときに、言葉や音の情報は有効ですが、
あまりそれらに頼ろうとしすぎるとかえって混乱を招くので、
簡潔に、効果的に用いなければいけないことがわかります。

また、見えない人に向けて、正確に解説するということももちろん大切ですが、
それ以上に、ある種の「誤解」から生まれるおもしろさや
芸術性の可能性も感じることができました。

今後の活動に活かしていきたいと思います。
(SLOW LABEL 西川)