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INTERVIEW

その先にあるもの Beyond Slow

04大好きなろうの人と
おしゃべりできる人を育てる

手話奉仕員

ディレクション:栗栖良依 編集:友川綾子 取材・文:清水康介 写真:古川智基(SAFARI.inc)

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耳の聞こえない人たちのコミュニケーション手段である「手話」。
多くの講習会やサークル等で教えられている手話が、生まれながら耳の聞こえない「ろう」の人にとってかなり分かりづらいものだと聞くと、びっくりするのではないでしょうか。
今回は、手話奉仕員としてSLOW LABELのワークショップやイベントで
スペシャリストとして活躍している前田房代さんにお話を伺います。

前田房代さん 第1回

手話奉仕員の前田房代さん

手話のもつ言語としての奥深さ

「なんだか尋問を受けるみたいよ(笑)。そんな経験もないけど」

と、これからはじまるインタビューの緊張をほぐすように、茶目っ気たっぷりに話す前田さんは、30年以上もの通訳経験をもつベテラン手話通訳者。長年、横浜を拠点に手話講師も務めている前田さんによると、手話表現には、大きく分けて3パターンがあるそうです。

日本語を知っているかどうか

「たとえば『今日はいい天気ですね』という文であれば、『今日』『いい』『天気』『ですね』と、日本語の語順に手話の単語を入れて表す方法で、『日本語対応手話』といって、一般に教えられているものです。」

「でも、ろうの中には、『空』『青』『くっきり』『今日』というような、講習会では学ばない語順の表現で話すろう者が多くいるのね」

ろう者の間では昔から使われてきた後者の手話を、「ろう者的手話」や「伝統的手話」、あるいは「日本手話」などと呼ぶそうです。また、「日本語対応手話」と「日本手話」との「中間手話」もよく使われています。聞こえない方の中には、聴者として生まれ、病気や怪我など何らかの理由で耳が聞こえなくなった中途失聴者もいます。こうした場合には、日本語の語順通りの表現である日本語対応手話を好まれている方が多い。どの手話に馴染みがあるかは人によって様々だといいます。

前田 房代(まえだ ふさよ)

手話奉仕員

PROFILE

前田 房代

横浜市手話通訳奉仕団たつの会講師。30年以上の手話通訳経験を持ち、テレビや舞台など様々な現場で広くプロフェッショナルの手話通訳者として活躍。現在は学校の非常勤講師や横浜市委託事業手話講習会、中途失聴難聴者協会、企業等での手話講師としての仕事をメインに活動している。2017年のヨコハマ・トリエンナーレをきっかけにSLOW LABELに関わりはじめ、エアリアルパフォーマンスでの空中手話などにも挑戦した。2019年5月、手話ができる人と手話通訳者人口拡大のため、任意団体「和(なごみ)」を設立。後進の育成に力を注いでいる。

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