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INTERVIEW

その先にあるもの Beyond Slow

06フェスティバルの大舞台で
創作をやりとげた充実感を胸に

パラトリ2017
参加アーティスト

ディレクション:栗栖良依 編集:友川綾子 取材・文:清水康介 写真:古川智基(SAFARI.inc)

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2017年のヨコハマ・パラトリエンナーレ(以下パラトリ)でお披露目された
アートプロジェクト『「ない」から始めるプロジェクト』。
ライブペインティングを中心にした同作のアーティスト、寺垣螢さんが今回のお話の主人公です。
ですが、螢さん自身は昨年、20歳という若さで亡くなられてしまいました。
お名前のとおり私たちに温かな光を残してくれた螢さんについて、ご家族の方、
および螢さんが通われていた施設「訪問の家 朋(とも)」の方々にお話をお伺いしました。
読み進めるに辛い部分も出てくるかもしれませんが、最後までお付き合いいただければ幸いです。

寺垣 螢さん 第1回

子供の頃の螢さん。左が螢さんで右が双子の姉の木さん

空に旅立った螢さんとの出会い

奥から寺垣麻波さん、寺垣木さん、朋施設長の名里晴美さん庄司七重さん

訪問の家 朋でインタビューに応じてくれたのは、朋の施設長である庄司七重さん、朋を含めた施設を運営する福祉法人「訪問の家」理事長の名里晴美さん、螢さんとは双子にあたる木(もく)さん、そして、お母様の麻波さんの4名です。皆さん終始和やかな雰囲気で、施設の職員さんと親御さんがこんなにも仲が良いのかと驚かされました。

「(螢さんが)18歳の時にここに通い始めて、1年目でパラトリの話があって」

と庄司さんは振り返ります。

創作行為を通じて障害や福祉について考える

深くお話を伺う前に、『「ない」から始めるプロジェクト』について簡単にご説明を。「片山工房」という障害福祉施設が神戸にあります。そこでは、たとえば右足なら動く、という人が右足でペンキ缶を蹴り倒すことで絵画制作を行うなど、その人その人の身体に合わせた表現活動を行っています。その活動のなかで培われた方法論を応用しようというのが、この『「ない」から始めるプロジェクト』。

重度の身体障害を持っていた螢さんの場合は、部分的に動く指を使うことになりました。パラトリエンナーレの当日、片山工房の新川修平さんによる仲立ちのもと、選んだ色のペンキの入った紙コップを指の力で倒し、新川さんのファシリテートのもと、右に左にとキャンバスを倒して、ペンキをドリッピンングする方向を決めて絵画を生み出します。このパフォーマンスにさらに、演劇評論家の藤原ちからさんが、作品制作の日々を文章に綴ったものを合わせたのが、『「ない」から始めるプロジェクト』の概要です。

ヨコハマ・パラトリエンナーレ2017での螢さんのパフォーマンスの様子

寺垣 螢(てらがき ほたる)

パラトリ2017 参加アーティスト

PROFILE

寺垣 螢

お父さんの宜記さん、お母さんの麻波さんと双子のお姉さん木さんとの4人家族で育つ。特別支援学校を経て、2017年度から訪問の家「朋」に通所。2017年のヨコハマ・パラトリエンナーレにて、絵の具の入ったコップを倒すことでペインティングを創作するパフォーマンス『「ない」から始めるプロジェクト』にアーティストとして参加。フェスティバル当日は見事なコミニケーションとタイミングで大作絵画を制作した。2018年5月に体調が急変し永眠。

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