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INTERVIEW

その先にあるもの Beyond Slow

11ダンスはコミニケーション
個性でつながる輪を広げたい

ダンサー/アカンパニスト

ディレクション:栗栖良依 編集:友川綾子 取材・文:清水康介 写真:古川智基(SAFARI.inc)

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beyondスロー取材班が今回訪れたのは、新宿区にある未就学児童向けの施設「スパーク初台センター」。
「スパーク運動療育」という、子どもの発達を促すメソッドに基づいたプログラムを提供する場所です。
ここで運動療育士として働いているのが、SLOW LABELのスペシャリストで、
アカンパニスト/ダンサーとして頼もしい活躍している定行夏海さん。
小さなころからダンスを続け、「ダンスはコミュニケーション」と話す定行さんにお話を伺いました。

定行 夏海さん 第1回

ダンスで心を動かせる人に

定行さんのインタビューを始める前に、実際に施設で行われているプログラムを見学させてもらうことになりました。1人の子どもに対して、定行さんを含む2人のスタッフが付いて、部屋中を追いかけ回ったり物陰に隠れたり、一見遊んでいるような賑やかな雰囲気です。それにしてもものすごい運動量で、約1時間のクラスが1日に5回もあるというから驚きです。

「でも闇雲に動いているわけではないから、そんなに消費はされないです(笑)。『こういうふうに関わろう』とか色々と脳みそも使うので、最初のころはすごい疲れましたけど。子どもたちは遊びのなかで発達するので、豊かな遊び場をつくりたいんですけど、全体的な支援計画もあって『今日はここを重点的に伸ばしたい』みたいな自分のなかのミソみたいなものは決めているんです」

定行さんが実践しているスパーク運動療育とは、『脳を鍛えるには運動しかない!(原題:SPARK)』などの著書で知られる、ハーバード大学のジョン・J・レイティ博士による「運動によって脳機能が改善される」という理論を発達障害へと応用したもの。東京都から指定を受けて2012年に設立された児童発達支援事業所「スパーク代々木センター」を中心に、現在では全国に15以上の事業所にてスパーク運動療育に基づいたプログラムが提供されています。

幼い頃からの経験が結びついた

「体を上手く動かせない子に対しては、楽しみながらやっているから苦にならないけど実はすっごい動いているとか。逆に体は動くんだけど受け答えが苦手な子に対しては、『じゃあどれにする?』とかいちいち聞いてみたり。答えが返ってこなくても『コミュニケーションしようよ』という気持ちが伝わるように。運動療育を通して、実際に子どもたちが変化するのを見れば見るほど、こういう知識が欲しかったんだと実感しています」

アフリカンダンスのダンサーのお母さんとドラマーのお父さんを持つ定行さんは、幼いころからダンスに親しんでおり、インクルーシブダンスに初めて触れたのが小学1年生の時という早熟ぶり。京都造形芸術大学の舞台芸術学科を卒業後、東京に出てきてからもアルバイトをしながらダンサーとして活動していました。「どうせ働くなら福祉や発達支援などについて学べるものがしたい」と探していた時に出会ったのが「ダンサーさん探しています」というFacebookの投稿でした。

定行 夏海(さだゆき なつみ)

ダンサー/アカンパニスト

PROFILE

定行 夏海

幼少の頃から西アフリカの伝統舞踊を柳田知子氏と母である定行雅代より学び、2004年からNPO法人みやぎダンスのインクルーシブダンス活動・舞台作品に参加。京都造形芸術大学舞台芸術学科にて、伊藤キム、寺田みさこ等に師事。2015年から3年間フィジカルシアターカンパニーGEROに所属。 「コミュニケーションとしてのダンス」「誰しもが対等に在れる場づくり」を目指し、現在は運動療育士®(スパーク協会)として児童発達支援を行いながら、ダンサー・ファシリテーター・振付を行っている。(NPO法人『みやぎダンス』指導 / おやじダンスパフォーマーズ『出舞一丁』振付・指導)。SLOW LABELではアカンパニストとして「The Eternal Symphony 1st mov.」 / ヨコハマ・パラト リエンナーレ2017「現代サーカス'sense of oneness'」 / 国際障害者舞台芸術祭True Coloursシンガポール「女松虫(演出:金井ケイスケ、振付:ソンシリー・ジャイルズ)」などに出演。

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