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【レポート】サン・クロレラ×NPO法人スローレーベル 共同プロジェクト レポート 「Glue Crew による障害者雇用のパイオニア日本理化学工業 視察」

2020 01/21 Tue

私たちNPO法人スローレーベルは、健康食品メーカーのリーディンカンパニーとして今年50周年を迎える株式会社サン・クロレラと、2019年から2021年の3年間に渡り、共同プロジェクトを行なっています。

共同プロジェクトでは、サン・クロレラにおける「多様性を企業と人材の力に変える持続可能な企業文化づくり」を目指し、次の活動を推進しているところです。

・NPO法人スローレーベルが企画する障害のある人とない人が一緒に行う体験学習型の研修を実施し、「Co-Creative人材」の育成と、部署・部門を超えたネットワークづくりに取り組む。
・この体験により、社内の中に障害のある人とない人、言語や文化、生活習慣の違う人たちが互いの違いを認め合いながら、互いに支え合い、チームで創造性を発揮する事、Co-Creativeな視点で物事を捉える感性や、コミュニケーションスキルを育む。

NPO法人スローレーベルとしては、このプロジェクトを通じて、社員の方々の心の中に、会社内のみならず、社会生活の中でも多様性を認め合う意識変容を起こす事が、「多様性と調和のある社会」の実現への一歩と考え、共に取り組んでいます。

サン・クロレラでプロジェクトを推進するのは、社内公募に手を挙げてくれた社員メンバー9名。
メンバー名は、「Glue Crew(グルー・クルー)」。Glue=のり(接着剤)の意味から、社会にある多様性を意識し、それらを浸透させ繋ぎ合わせるための活動をする集団という意が込められています。

これまでGlue Crewメンバーは、日常生活や仕事の中では経験してこなかった障害者との活動を通じて、障害者理解を深めると共に、社内で様々な違いを認め合う環境を創り出すためには何が必要なのか?を一緒に考えているところです。

メンバーは2019年4月から数名ずつ、障害者を含む多様な参加者とのワークショップ「SLOW CIRCUS SCHOOL」に参加。夏には、障害者支援施設として利用者の自由なアート活動を先駆的に行なっている京都市のNPO法人スウィングや、滋賀県甲南市のやまなみ工房の視察を行い、11月には、障害者雇用のパイオニア企業である日本理化学工業株式会社を訪れました。

今回は、この日本理化学工業株式会社の視察について、詳しくレポートします。

日本理化学工業株式会社は、学校で使う「チョーク」を製造する会社。障害者雇用率7割(社員88名中64名が知的障害者)の現場を実際に見て学ぼうと、視察先に行くことになりました。

視察日に伺うと、会議室にGlue Crewメンバー4名を始め、他の企業や支援学校から30名近い視察者が集まり、まず、大山社長から直々に、障害者雇用に取り組む経緯、理念、秘訣をお聞きしました。印象に残った言葉を列挙します。

・川崎工場の製造ラインの社員20名は全員が知的障害者。管理者を1名だけ置いているが、皆自分の役割を分かって一人で作業ができるので、管理者がいない事の方が多い。
・民間企業であるので、社会貢献やボランティアで障害者を雇用している訳ではなく、きちんと利益を出す事が必須である。
・社員には、定年になるまで働いてもらいたい。重度の障害者も企業の貴重な労働力。
・計算や読み書き、定規で測る事が苦手であれば、どうやったら出来るのか工夫する。障害者だから、出来ないとは思わず、出来ると思っているから、絶対に諦めない。理解できないのは教える側の問題である。
・障害者雇用に積極的に取組むきっかけは、禅寺のお坊さんの「人間の究極の幸せとは、人に愛されること、ほめられること、人の役に立つこと、人に必要とされることの4つ。福祉施設で大事に面倒を見てもらうことが幸せではなく、働いて役に立つ会社こそが人間を幸せにする。」という言葉。

大山社長による講演の後には、担当社員さんの案内で工場内を見学。
この日は鮮やかな赤いチョークを製造していました。

製造工程は、流れ作業で行なっています。
あちらこちらに、色分けやイラストを駆使し、使いやすい専用器具をつくるなど、作業をわかりやすくする工夫が見られました。これは、一人ひとりの特性を注意して観察する事で編み出される、作業を的確に行うための工夫だそうです。

練りたての柔らかな紐状のチョークを丁寧にかつ素早く取り上げて並べていきます。

チョークを焼き上げた後には、品質を厳しくチェックして不良品を×の箱に除いていきます。
迷ったら△らしいのですが、この日の担当者は的確に判断できるベテランさんでしたので、△は少なかったです。

会議室には、社員の目標が張り出されていました。目標もカラフルで楽しそうです。
毎日、終了後に業務報告で「目標達成すごいね。よくできたね。」と褒めてもらえると、きっと幸せな気分になりますね。

見学者から「社員の中に障害福祉を専門的に学んだ人がいるのか?」という質問があり、担当の方は次のように回答されました。

「障害福祉を学んだ者は、一人もおりません。皆、会社に入社後、先輩・上司が障害者と共に働く姿を見たり、教えてもらいながら、成長していきます。」

このキッパリと答えられた言葉には、ハッとさせられました。

重度の障害者を企業の主戦力として捉え、彼らが安心して働ける環境を創り出すためには、「前提として」障害者対応の専門的な知識が不可欠だと考えてしまいます。

また、私たちは、障害者が一般企業で主戦力として働くことや、街の中で不自由なく生活することは、「無理」と決めつけてしまいがちです。

この「無理」という考えこそが、障害者の社会参画の障害(バリア)になっているのではないでしょうか。

日本理化学工業では、「無理」という考えを排除し、障害のある同僚に寄り添い、一緒に仕事のやり方を考える事を徹底してきた結果、現在、64名の知的障害者の雇用を生み出し、障害者の自立と共に、会社経営も堅調です。

この取組は、決して他の企業や社会でできない事ではないはずです。
多くの企業が、この成功事例に続く取組を生み出すように、NPO法人スローレーベルとしても、企業の方々と連携して、「無理と思ってしまう気持ちのバリア」を取り除いていこうと、気持ちを新たに引き締めました。

日本理化学工業株式会社の大山社長様をはじめ社員の皆様、本当にありがとうございました。

サン・クロレラのGlue Crewメンバーは、これまでの活動で、自身がこれまで持っていた障害者のイメージがガラリと変わり、多様性を受け入れる事の重要性を実感しています。この実体験をサン・クロレラ社内のGlue Crewメンバー以外にも、できるだけ多くの社員にも経験してもらう事で、会社全体をこのプロジェクトに巻き込んでいこうと策を練っています。まだまだ、プロジェクトは半ばですが、また進捗を報告しますので、どうぞ、ご期待ください。

※トップ画像のお絵かきは、日本理化学工業が開発された、ガラスやプラスチックなど、ツルツルした面に書くと、水拭きで簡単に消す事ができる「キットパス」で書きました。

文・写真 多田惠子(SLOW LABEL)

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