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【レポート】日米プロジェクト始動

2022 12/07 Wed

SLOW LABELでは2022年より、独立行政法人国際交流基金の助成事業で、日米ソーシャルサーカス交流を行っています。
日本でのスローレーベルのソーシャルサーカスの活動を、アメリカでの実践者や専門家の方たちに知ってもらい、またSLOW LABELも彼らから多くのことを学び、お互いの知見交換を通しての交流を始めています。

今年は初めての交流ということで、日米のソーシャルサーカス、またサーカスの専門家とのオンライン共有会を3回開催しました。
3回の共有会それぞれのテーマは、
① 障害のある方とのソーシャルサーカス
② ソーシャルサーカスの発展と人材育成
③ ソーシャルサーカスのビジネスモデル
として、日米から実践者、研究者の方々にお話ししてもらい、またその後のディスカッションで問題の共有や、意見交換を行いました。

1回目では、SLOW LABELが2020東京パラリンピック式典を目指して取り組んできたこれまでの活動について共有し、世界的イベントで多くの人とかかわる創作の意義について知ってもらいました。
また、アメリカで長く障害のある方たちとソーシャルサーカスに取り組んできたAnn WoodruffさんとJo Montgomeryさんそれぞれから、具体的なプログラム開発の方法から、団体やスクールの運営方法までとても有益な情報をうかがうことができました。
印象的だったのは、Annさんから、「プログラムは多様な人に届くほどよりよく発展していく」という言葉です。誰もが参加できるプログラムになればなるほど価値は上がり、最初の開発よりさらに良くなっていくというお話でした。
また、Joさんからも「ソーシャルサーカスの場には様々な人がいること自体重要であり、価値があることだ」というお話があり、SLOW LABELのソーシャルサーカス活動の自信にもつながりました。
そしてお2人共通の意見として「身体的成長が社会的成長につながる」ということがありました。これまでSLOW LABELでは精神的影響について強く意識していましたが、身体的影響により個人の自信が上がり、それにより社会的成長を促しているという事例は、SLOW LABELの今後の活動の方向にも影響を与えるものとなりました。

2回目では、SLOW LABELの人材育成の考え方とソーシャルサーカスの普及について知ってもらうとともに、アメリカでのソーシャルサーカスが発展と人材育成について、アメリカのサーカス統括団体ACE(American Circus Educators)の役割をAudrey Spinazolaさんから、サーカス研究者Thomas Wallさんからはアメリカでソーシャルサーカスが受け入れられるまでの過程をお話しいただきました。
Thomasさんは、アメリカではシルクドソレイユがそれまでの「サーカス」のイメージを大きく変えたことで、人々にとってサーカスが「自分もやってみたい」と思えるほど”格好いいもの”になったと言われました。それによりサーカスは見るものからするものへと変化していき、より多くの参加者を得ることでソーシャルサーカスも発展・普及することができました。
Audreyさんはソーシャルサーカスがアメリカで発展していく中でACEの果たしてきた役割を教えてくれました。現在では多くの団体や個人が所属する統括団体となり、安全に関するガイドラインの策定や情報集とその共有を行い、活動者の連携を図ることで更なる発展を助けています。
また、お2人はソーシャルサーカスの抱える課題についても話してくれました。1つは財源とコミュニティサポート、もう一つは人材育成です。これらは日本でも同様の問題を抱える団体は多く、簡単に解決するのは難しいですが、常に考えていくべき日米共通の課題として認識されました。

3回目はSLOW LABELが抱える最も大きな課題として、ビジネスモデルについて話し合いました。
SLOW LABELは継続的活動に向けて、3つの柱を立てることで事業に取り組んでいます。
1つは、プログラムの有料化。これまで無料で提供してきたプログラムをより充実した内容で、有料化つまり収益化を目指しています。
2つ目は、新たなるターゲットの開発。障害のある方を対象としたワークショップやプログラムをより多く一般の方向け、また企業や団体など個別の目的に合った形で提供できるように開発しています。
3つ目は、寄付団体としての充実。認定NPO法人となることで、より多くの企業や個人の方からの寄付を受けやすくし、またその団体としてふさわしい活動をしていきます。
そのような中で、瀬戸内サーカスファクトリー田中未知子さん、Afton Bensonさん、Thomas von Oehsenさんのお話はとてもためになるものでした。
共通していたのは、「理解する・してもらうことの重要性」でした。
自分たちのことを知ってもらう、理解してもらうことで地域や企業、人々と連携が生まれるが、そのためには相手が何を望んでいるか、どのような特徴を持っているのかなど自らの理解も合わせて進めることが重要であるとおっしゃっています。その先に「継続的活動の種」がまかれていくということでした。
Aftonさんのことばで、「一つの収入減に頼らず多様化するべきで、持続可能な収入はとても重要。でも100%持続可能なものはない」という言葉がとても印象に残りました。収益の多様化にSLOW LABELでは現在取り組んでいますが、このことを肝に銘じて進めたいと思いました。

このように、3回を通してとても有益で充実した内容を学ぶことができ、また、日米の専門家の交流の場としても活用することが来ました。
この助成事業は2024年まで続くものであり、この共有会を第一歩として日米の交流促進を行っていきたいと考えています。

 


12月16日には2022年の活動をまとめた日米対話フォーラムも開催します。
日米対話フォーラム
文化芸術を通した多様性社会推進に向けて
-「ソーシャルサーカス」のアプローチが持つ可能性-
日時:2022年12月16日(金曜日)14時~16時40分(13時30分開場)
会場:国際交流基金(JF)本部 ホールさくら(コモレ四谷内)
東京都新宿区四谷1-6-4
(JR中央線、JR総武線、東京メトロ丸ノ内線、東京メトロ南北線 四ツ谷駅利用)
※会場開催のみ(後日、シンポジウムの映像をオンラインで配信します)
言語:日本語、英語(逐次通訳あり)
情報保障:手話通訳あり
主催:国際交流基金
共催:認定NPO法人スローレーベル
詳細はこちら

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