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【レポート】3/28 SLOW MOVEMENT Showcase & Forum vol.5 ―Well-being Arts 健やかな未来を創造しよう―

2021 03/29 Mon

2021年3月28日(日)に『SLOW MOVEMENT Showcase & Forum vol.5 ―Well-being Arts 健やかな未来を創造しよう―』が無事に終了しました!
2016年より『港区文化プログラム連携事業』として港区様のお力添えをいただき、毎年、障害のある人々の舞台芸術活動に焦点を当てた本事業を開催してきました。本年は5回目を迎え、本事業としては最終回を迎えました。
コロナ禍でオンライン開催となった今年は、いったいどんな催しになったのでしょうか。


(左から望月茂徳、青木涼子、栗栖良依、金井ケイスケ。終演後、パフォーマンスの緊張から解き放たれ、皆一様に安堵した表情を浮かべている)

今回のイベント会場は私たちスローレーベルのYouTubeチャンネル。
配信の拠点となったのは表参道にあるスパイラルホールでした。

3時間に渡るボリューミーなイベントは、全部で三部構成になっていて、PART1はドキュメンタリー、PART2はショーケース、PART3はディスカッションでした。

それではPART1から順に振り返っていきましょう。
ここではスローレーベルが、日本初のソーシャルサーカスカンパニー『スローサーカスプロジェクト』を立ち上げるまでの6年間を描いたドキュメンタリーを上映しました。


(ドキュメンタリーの冒頭。栗栖が「ようやくスタートラインに立てた」と語ったヨコハマパラトリエンナーレの様子)

「ソーシャルサーカス」という言葉を初めて聞いた方もいらっしゃると思います。
ソーシャルサーカスとは、サーカスの練習を通じて、協調性・ 問題解決能力・自尊心・コミュニケーション力などの社会性を総合的に育む教育プログラムのひとつです。
世界では、貧困・難民・虐待などによって困窮する人々が社会で活躍するために活用されています。スローレーベルでは、このサーカスを日本社会に合うようなプログラムへと変えて、障害の有無や国籍や性別に関わらず、多様な人々とともにソーシャルサーカスに取り組み、そして広める活動を行ってきました。

そういった活動をまとめたのが今回のドキュメンタリーで、『Documentary of SLOW CIRCUS PROJECT』というタイトルの通り、スローレーベルが行ってきたソーシャルサーカス活動やスローサーカスプロジェクトのすべてが詰め込まれた映像になっていたんではないでしょうか。

ライブ配信を見て下さった方からは、こんな感想が届きました。

 

このドキュメンタリーで、スローサーカスプロジェクトに興味を持たれた方は、ぜひ4月25日26日にある彼らの初公演を見にいらしてください!

日本初のソーシャルサーカスカンパニー初公演です。


https://www.slowlabel.info/4681/

 

さて、続くPART2では日本とオーストラリアの共同プロジェクト『羽衣-HAGOROMO-』の演奏実験でした。
2019年末に発見された新型コロナウィルスが、2020年には日本でも感染拡大し、社会活動だけではなく文化芸術や福祉の現場においても、これまでの手法や価値の方向転換を迫られました。
しかし、リアルで一堂に会することが難しくなったことで、映像配信技術やオンライン化などによるアートへの参加機会が広がり、増えました。
私たちスローレーベルでも、オンラインによる配信パフォーマンスを試みようと行った、最初の一歩でした。

コロナによる人々の関係の分断を、アートとテクノロジーにより再びつながることを目指し探る実験。
日本で謡う青木涼子さんの謡『羽衣』に、中継で繋いだメルボルンの音楽グループ・アンプリファイド・エレファンツが演奏を重ねます。さらに、その両国を繋いだ映像に、RMIT大学のジョナサン・ダックワーズさんと立命館大学の望月茂徳さんが共同開発したプログラムによってメディアアートを重ねます。

何とも複雑で、盛り沢山なこの企画。テクニカルチームのやることも多く、今回のプログラムの中で、会場のスタッフたちにもっとも緊張の走る瞬間です。


(配信会場にいるテクニカルチームの人たち。演奏後のトークセッションで、栗栖さんが「皆さんにお見せしたい!」と言っていた圧巻のテクニカルチームのパソコン。画面の数はかぞえきれないほど…)

望月さんの和やかな挨拶で始まったPART2。
しかし、アンプリファイド・エレファンツの演奏が始まると、先ほどまでのスローサーカスプロジェクトのアットホームな空気ががらりと変わり、幻想的な現代音楽の雰囲気に会場が包まれます。
古典楽曲ながら、日本人の知っているいわゆる「お能の謡」とも一味も二味も違う印象に生まれ変わった『羽衣』。
アンプリファイド・エレファンツのもつ独特の音が、不思議と能の音楽と合います。
彼らだけの演奏は鋭くエレクトリックな印象ですが、青木さんの謡声が入ることでそこに神聖な空気感が吹き込まれていきました。


(演奏実験中の様子。日本とオーストラリアをインターネットで繋ぐ交流パフォーマンス)

事前に「メディアアートが演奏を彩ります」と告知しておりましたが、どういった形になるのか想像できた方は、おそらくいらっしゃらないでしょう。
私たちスタッフも実はよくわかっていませんでしたが、リハーサルで画面にメディアアートが表出され「ああ、なるほど」と合点がいきました。
実際にご覧いただいた方は、お気づきになられたでしょうか?
実はこのメディアアート、アンプリファイド・エレファンツの演奏の音に反応して動くものと、青木さんの声に反応して動くものと二種類がありました。
そして、青木さんのメディアアートは、羽根のような装飾が散っており天女がなくしてしまった羽衣のようにも見えるのです。
お気づきでなかった方はアーカイブで確認してみてくださいね。

メディアアートの中にも、ダックワーズさんと望月さんの、アーティストとしてのこだわりが見えた今回の演奏実験。
日本の伝統芸能とオーストラリアの現代音楽、そしてテクノロジーによるメディアアート、新旧混合のクロスカルチャーパフォーマンスが実現した瞬間でした。

観覧していた方からもこんな感想が寄せられました。

実はこのパフォーマンス、トークセッションの中でも触れていましたが、日本のチームとオーストラリアのチームは一度も直接お会いしたことはありません。
新型コロナウイルスの流行のため、両国の行き来は難しく、残念ながらオンラインでの打ち合わせとメールでの確認のみで作り上げました。
さらに言えば、日本のチームも直接の対面は本番を入れて3日のみ。
この事実を知った皆様が驚いて下されば、今回の演奏実験は十分に成功と言えるのではないでしょうか。

そして、緊張感あふれるパフフォーマンスから、出演者や技術協力をしてくださった方たちとのトークセッションに移ります。


(手前から栗栖良依、青木涼子、望月茂徳、そして画面にはジョナサン・ダックワーズが映っている。この実験が実現するまでの経緯や各々の活動について語られた)

それぞれの方の今までの経歴をご紹介いただき、改めて今回の実験にはジャンルという垣根を越えて様々な方が集い、ひとつの作品を作り上げたことがよくわかりました。
これは私たちスローレーベルの目指している理念でもある「変化をおそれずに多様性と調和のとれた社会をめざす」という観点が近いものだったように感じます。

トークセッションの中で青木さんが、アンプリファイド・エレファンツにとって楽器のオーディオ・インターフェースや音楽が天界に帰るためのための羽衣のようだとおっしゃっていました。
きっと人はそれぞれに“羽衣”を持っており、それがあれば障害の有無・年齢・性・国籍をこえた交流ができる天界に誰もが行けるのではないでしょうか。私たちスローレーベルはすべての人の“羽衣”になれるように活動を続けていきたいと、この演奏実験を体験し、想いを新たにしました。

このトークセッションをご覧いただいたオーストラリアの方からもこんな声をいただきました。

そうなんです。今回のイベントで陰の立役者であったのが通訳のお二人。
PART2の冒頭から通訳が入っていたことに気づいた方もいたと思いますが、トークセッションからはその仕事ぶりをしっかりとご覧いただけたと思います。
主に日本とオーストラリアをターゲットとして配信するにあたって、言語の壁は大きく重大なものでした。
出演者の方の、そして私たちスローレーベルの、想いを正しくお伝えするために、通訳さんは欠かせない存在でした。

そして、通訳さんは次のPART3では、英語チャンネルの方で望月さん、金井さん、栗栖さんによるディスカッションを同時通訳していたのです。
英語チャンネルを聞いていたスタッフからは「国際ニュースを聞いているみたい、すごい……」と感嘆の声が寄せられたほど。
今回のイベントには、本当に様々なジャンルのプロフェッショナルに携わっていただきました。

(PART3のディスカッションの様子。会場では登壇者の背面に巨大なスクリーンが用意されていた)

ついにPART3、ディスカッションの部となりました。

栗栖さんと望月さんには引き続きご登壇いただき、そこへ金井ケイスケさんをお招きしました。
お二人からご自身の活動についてご紹介いただいた後、望月さんからはPART1の、金井さんからはPART2の感想を交換しながら「Well-being」についてのディスカッションは進んでいきます。

「怖いけど、難しいけどやってみたい」あなたの“障害”はなにか。

「リアル」で会うことと「オンライン」で会うことはどちらがより良いのか。

文化芸術は本当に不要不急なのか。

などなど。コロナ禍ならではの話が飛び出し、白熱したディスカッションになりました。
ご視聴いただいていた方は、このディスカッションを聞いてどのように感じられたでしょうか。
このイベントがあなたの考えるキッカケ、願わくはヒントになれたのなら幸いです。


(終演後に出演者とテクニカルスタッフも一緒にパシャリ。はじけるような笑顔がこのイベントの成功の証)

今回のイベントには「リアルタイムでは見れなかったけれど見てみてみたい」「当日に一回見たけれどもう一度見たい」というお声をいただき、アーカイブ期間を延長し、アーカイブ申し込みを受け付けることになりました!
見逃してしまった方も是非お申込み下さい。

『SLOW MOVEMENT Showcase & Forum vol.5』のアーカイブ視聴申し込みはこちらから
https://forms.gle/F6ZE4nWWMDc5zRs8A

イベントの“アンコール”ができるのも、オンラインイベントならではですね。
今回、たくさんの初めてを経験したスローレーベルはさらにパワーアップ!
これからも、みなさんに「スロー」で「ハッピー」なアートをお届けしていきます。

『SLOW MOVEMENT Showcase & Forum vol.5』のイベント詳細はこちら
https://www.slowlabel.info/4727/


写真クレジット©YukoAmano

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