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【レポート】SLOW MOVEMENT Showcase & Forum vol.3 前半(第1部〜第2部)
2019 02/25 Mon
2019年2月10日に『SLOW MOVEMENT Showcase & Forum vol.3 -ソーシャルサーカスの可能性-』を開催いたしました。
スローレーベルにとっては年に一度の総決算的なこのイベント。
前半(第1部&第2部)と後半(第3部)に分けて、当日の様子のレポートをお届けします。
「Showcase & Forum」というイベント名を聞くと、なんだか堅苦しく感じるという方もいるかもしれませんが、今回のイベントでは、ご来場の皆さんにサーカスの賑やかで自由な雰囲気を楽しんでほしくて、いろいろ工夫を凝らしました!
会場をカラフルな風船やフラッグで飾り付けるほか、
普段からスローレーベルのパフォーマンスに参加してくださっている皆さんに
「おもてなしパフォーマー」としてお手伝いいただきました。
また、今回のイベントでは次のような情報保障をご用意しました。
・手話通訳
・聴覚障害者向け字幕
・英語音声ガイド
・出入口に近い座席の希望
・車椅子席
字幕は主に聴覚に障害がある方に向けたものですが、
障害がない方からも
「字幕があるとプレゼンの内容などがわかりやすくて助かる」
といったお声も。
車椅子の方などの客席誘導等スペシャルニーズ対応では、
スローレーベルのアクセシビリティ講座受講生の方にもお手伝いいただき、
表に出ない部分でも多くの方のお力を借りて成立したイベントとなりました。
第1部プレゼンテーション
さて、いよいよ本編開始です。
司会はスロームーブメントのパフォーマー・アカンパニストとしておなじみの、
齊藤優衣さんと鹿子澤拳(かのけん)さん。
二人のコミカルな司会進行で和やかに会が始まります。
自身も聴覚に障害があるかのけんは、
自分でも手話をしながら司会をするという初めてのスタイルに挑戦しました。
まず、今回、平成30年度港区文化プログラム連携事業として一連の取り組みを共催してくださった港区の副区長の小柳津明さんよりご挨拶をいただきました。
「港区で開催したソーシャルサーカスワークショップに参加した方からは、全身を動かしたり、参加者と一緒になって表現したりして、大変楽しかったという声を聞きました。こうした取り組みは、港区が目指している年齢、性別、国籍や障害の有無を問わず共生できる社会づくりにとても有効だと考えています。今日の会が成功するようにお祈りして、ご挨拶とさせていただきます」
と応援のお言葉をいただきました。
続いてスローレーベルディレクターの栗栖良依のプレゼンテーションです。
「平成30年度 SLOW MOVEMENTの取り組み」と題し、
今年度の活動内容のご報告をさせていただきました。
昨年度までの活動から明らかになってきたソーシャルサーカスの可能性の追求をさらに深めていった今年度。
海外でのソーシャルサーカスの取り組みから学ぶべく、
世界的サーカス団「シルク・ドゥ・ソレイユ」の活動拠点であるカナダのケベックをはじめ、ジャカルタやカンボジアなどアジアの地域や、イスラエルなど中東へもリサーチへ行き、
日本向けのソーシャルサーカスプログラムの開発に向けて研究をおこないました。
その成果として、港区でのソーシャルサーカスのワークショップを開催し、区民の方をはじめとしていろいろな方にサーカスを通した身体トレーニングやソーシャルスキルの養成を体験していただきました。
また、誰もが参加しやすいインクルーシブなプログラムづくりを広める試みとして、
「障害者のアート・スポーツ活動指導者育成講座」を実施。
今年度は講座の研究開発として、スロームーブメントの取り組みで工夫している点をシェアし、我々も受講者の方から多くの知見をいただきました。
(平成30年度内閣官房 「オリンピック・パラリンピック基本方針推進調査」に係る試行プロジェクト)
そして、今後のイベントのお知らせ。
4月6日は「ソーシャルサーカスデイ」として、
世界的にソーシャルサーカスにかかわるイベントが開催される日です。
もちろんスローレーベルもこのムーブメントに参加すべく、ワークショップを開催します。
その名も「SLOW CIRCUS SCHOOL」。
これを皮切りに、「SLOW CIRCUS SCHOOL」は、
毎月定期的にさまざまな事情により社会に出ることが難しい若者を対象に支援プログラムとしてサーカスワークショップを実施していきます。
サーカスを用いた活動の歩みを止めずに、拡大していけるよう次年度も取り組んでいきます!
第2部 ショーケース
第2部はいよいよショーケース!
イタリアのサーカス・アーティスト ダニエレ・ジャングレコさんと、
スロームーブメントパフォーミングディレクターの金井ケイスケさん、
そして五十嵐謙さん、小川香織さん、高島尚義さんの日本のパフォーマー3名が一緒に行ったワークショップの様子を垣間見ることができるパフォーマンスです。
ダニエレさんは昨年の秋からスローレーベルチームとネットで連絡を取り合い、
メッセージ動画の交換など、パフォーマーたちと金井さんの稽古にSNSを通じて遠隔で参加してくれていました。
さらに2月上旬に来日し、3名の障害のある参加者と4日間のワークショップを行ってきました。
短い期間でのワークショップでしたが、
その間のパフォーマーたちの集中力と楽しむ力は素晴らしく、
サーカスの持つ力をあらためて感じることができるものでした。
さて、どんな発表になるかドキドキ……。
ここからは、動画と写真で発表の様子をお楽しみください。
最初に登場するのは香織さん。
香織さんが「ジャーン!」というジェスチャーで袖から登場する誰かを紹介しようとするも、なかなか出てこない……という演出で始まるコミカルな場面です。
続けて、謙さんの帽子の中から出てきたスカーフを使ったパフォーマンス。
音に合わせて動きを止める、というのは、「だるまさん転んだ」というゲームもあるように、
障害の有無にかかわらず意外と難しいこと。
脳性麻痺のある謙さんも、稽古期間中ぴたっと動きを止めることに苦労していましたが、
だんだん自分の体をコントロールするのが上手くなっていきました。
続いて、帽子を使った香織さんのパフォーマンス。
去年から香織さんは帽子を回転させてかぶったり、
足で蹴って位置を移動させるなどの練習を重ねてきました。
香織さんの動きがなんともかわいらしく、見ていて思わず微笑んでしまうような場面です。
次に、パントマイムの要素を取り入れた、芝居仕立ての場面。
綱引きのパントマイムで引っ張られて袖から尚義さんが登場する、という流れです。
尚義さんは顔の表情や体の動きで表現する演技が上手で、この場面はダニエレさんが来日してから練習しはじめましたが、あっというまにものにしてしまいました。
尚義さんのボールのパフォーマンス。
ボールを投げて腕の下をくぐらせたり、お手玉のように交差させて投げたり、
尚義さんも昨年から稽古のときだけでなく、家でも練習を重ねてきました。
ピラミッドの場面。
ピラミッドの上に立つのは謙さん。
謙さんがボディービルダーのような決めポーズをするのがユーモラスで、
客席からも笑いが起きていました。
実は、スローレーベルで行ったトレーニングプログラムに参加したのをきっかけに、
日頃から筋トレに励んでいる謙さん。
この演出も謙さんのアイデアで決まりました。
「やっと見せ場がきた!」ということでこのシーンへの意気込みは相当なものだったのです。
最後は客席の方やおもてなしパフォーマーたちも巻き込んで踊り、
みんなでポーズを決めて終了!
後から振り返って、金井さんが「今までこのホールでやった中で、
一番客席から暖かく見守ってくれる空気を感じたパフォーマンスだった!」
と言っていたほど、アットホームな雰囲気でした。
パフォーマーたちの真剣に、楽しく、サーカスパフォーマンスに向き合う姿勢に、
皆さんが共感してくれた結果だったのではないかと思います。
堅苦しく客席と演者が分かれるのではなく、みんなが一体となって楽しむ場を作ることができ、スタッフ一同もとてもうれしかったです。
これこそがスローレーベルの場づくり。
さてさて、このあたりでレポートも前半を終了したいと思いますが、
その前に、休憩時間の様子も少しご紹介。
休憩時間、ホワイエでは、サーカス道具の体験販売コーナーや
熊本の野々島学園と共同開発した『SLOW GELATO』の特別販売もあり、
みんなが遊んだり、飲んだり、食べたりを楽しんでいました。
ここでもおもてなしパフォーマーの皆さんが大活躍でした!
レポート後半の第3部ディスカッションも後日アップいたします!
お楽しみに。
(SLOW LABEL 西川)
Photo : 427FOTO, Hajime Kato
主催 : 文化庁(平成30年度戦略的芸術文化創造推進事業)、スロームーブメント実行委員会、NPO法人スローレーベル
共催:港区(平成30年度文化プログラム連携事業)
助成:アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
後援:イタリア文化会館、ケベック州政府在日事務所、厚生労働省
協力:アルトロチルコ、シルク・ドゥ・ソレイユ、スパイラル/株式会社ワコールアートセンター
字幕指導:株式会社リアライズ
認証:beyond2020認証プログラム
港区文化プログラム連携事業とは・・・
港区と文化芸術活動団体が連携し、2020年に向けた気運醸成及びレガシー創出に向け、港区ならではの文化プログラムを展開するものです。
スロームーブメント実行委員会は、平成28年度から港区文化プログラム連携事業の指定を受けています。