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SLOW LABELでは、独立行政法人国際交流基金の助成金プロジェクト「日米対話によるインクルーシブな社会の実現に向けた協働事業」として2022年から3年間、人材育成、プログラム開発、ソーシャルサーカス交流事業を続けてきました。
そのあゆみをご紹介します。

それぞれの活動の詳細なレポートは、下記のリンク先からお読みいただけます。

【2022年】
初年度となる2022年は、まだコロナの影響も残っており、また日米との長距離の交流プログラムということもあり、オンラインでの取り組みも多くなりました。
大きく2つの柱となる「サーカスプログラムの開発」と「アクセシビリティへの取り組み」についても初年度は準備段階としてリサーチや開発が主な内容となりました。
・3-12月 企業向けソーシャルサーカスプログラムの開発
・5-10月 アクセスコーディネーター講座開発

【2023年】
2年目となる2023年は、シアトルを拠点とするSANCAをリサーチ訪問。現地でのノウハウを学び日本に持ち帰りました。
アクセシビリティについても、開発した講座をモニターへ提供する段階まで進みました。
・11月 SANCA(シアトル)訪問
・12月 日米プロジェクト報告会(オンライン)

【2024年】
3年目となる2024年においては、米国リサーチに加え、日米共同でのプログラム開発など新しいことにも挑戦しました。最終年として12月にはプロジェクトの報告会も行い、その場において今後の目標も提示することができました。
3年という長期間において人材育成施策、プログラム開発、交流事業を継続できたことで将来につながる基礎作りができました。
・6月-8月 キッズプログラム共同開発
・12月 日米プロジェクト報告会
▼本プロジェクトに携わった、SLOW CIRCUS トレーナーからもコメントをいただきました。

SLOW CIRCUS トレーナー/日米プロジェクト担当マネージャー 鈴木彩華
日米プロジェクトにマネジャー・トレーナーの立場で関わらせていただいた3年間は、ソーシャルサーカスが米国でどのように発展してきたかを垣間見ながら、今後の活動に向けて、運営面と現場づくりの両面においてどんなことが必要なのか考え続けた時間でした。一般的にダンスやスポーツより馴染みのうすい「サーカス」の認知度を高めていくことには未だ課題も多いように感じます。しかし、サーカスの持つ多様性、技を実現するまでの過程、社会の辺境にいた人たちが生み出してきた居場所という歴史的背景といった、この芸術形式を支える精神的側面は、まさに私たちの目指す社会の根底を支えるものに通じていることだと改めて感じ、続けることの必要性を感じました。
今回、新たに障害のある小学生を対象にしたプログラムを実施しました。これから社会へ出ていく子どもたちにサーカスを体験してもらうことの重要性とその価値の高さは感じたものの、実施する上での財源確保、参加者獲得の難しさを感じています。しかし、少しずつ子ども対象のプログラムも実施できるよう、自治体や民間との連携など、試みを続けていきたいと考えています。シアトルでも子どもたちの参加するプログラムを見学し、トレーナーの子どもとの関わり方についても学べた年だったので、今後の指導にも活かしていきたいところです。
また、SANCAは関わる人たちにとても愛されていることも印象的でした。1人ひとりがSANCAの活動に携わっていることを誇りに思い、程度の差こそあれ、主体的に自分の関わる居場所、として捉えているようでした。これまで通りワークショップの場が参加者にとっての居場所となることはもちろん、トレーナーや参加者のご家族、スローレーベルの活動を支えてくださる方々、拠点とする横浜にお住まいの方、各地で活躍するサーカス団員とその地域での活動…あげていけばきりがないですが、「互いを想い、きもちよく共に居られる場、社会を作る」ことを目指し、繋がった関係性をより豊かに、強くしていくことも、ソーシャルサーカスの実践を継続していく上で必要不可欠なのではないかと考えています。サーカスは、小さくて大きい、まとまりのある混沌が生み出す、美しい人たちの調和した世界だと思っています。少しずつ私たちのサーカスの輪が広がっていくことを願い、活動に繋がる日々の小さなこと1つ1つの質を高め、活動に邁進していきたいと考えています。

SLOW CIRCUS トレーナー 定行なつみ
SANCAへの視察と、日本でのキッズプログラムに参加させていただいたことは、とても実り多い経験になったと感じています。
キッズプログラムは手探りで内容を立ち上げるところから始まり、SANCAからのリアルタイムのフィードバックでは具体的な改善方法やバリエーションを教えていただき、シアトルの視察では現地の空気感や大切にしていることを肌で感じることができ、帰国してすぐに反映させていくことが叶いました。
また、SANCAのメンバーが日本でワークショップに参加してくださったことも、更なる研鑽につながったように思います。
SANCAのコーチやクラスには、しっかりと確立された方法や考え方の軸が共有されている様子でした。共通の軸が土台としてあるからこそ、どんな人が来ても、どんなことがあっても幅広く対応できる力に繋がり、ソーシャルサーカスの素晴らしい環境作りになっていると感じました。
今回の経験は、ソーシャルサーカスのトレーナーをする上で大切にするべきものを明確にする機会になりました。
今後の抱負
・キッズクラスの継続
子どもの時からソーシャルサーカスに出会うことは、自己肯定感や社会性を育むだけでなく、心理的安全性の高い環境を経験することによりこれからの日本の社会で生きていく上で必要なスキルに繋がっていくと考えます。
・「対等」な関係を探求する
SANCAのコーチ達の在り方は、まさに「対等」という言葉のままで、素晴らしい関わりを体感させていただきました。
きっと私達は時に過干渉だったり、「指導者」と「参加者」だったりしたこともあったと振り返ります。
立場としては「トレーナー」だったとしても、正解を示すだけでなく、伝えるべきは伝えて、共に考え、工夫して、一緒に同じ時間を歩いて行けるような心の奥での深い関係を探っていきたいと思います。
・継続したコミュニティ作り
「いつ来てもここには自分の居場所がある」と感じて貰える環境を作って行きたいと考えます。
また、継続して来たくなるようなプログラムの組み立て方や、参加者が自発的に取り組める環境も探っていきたいと思います。
